第三回目です。一番古い事例なんで一番記憶が曖昧ですがw
2回目の事例の少し前に起きたことですね。これがきっかけでディレクションやPMBOKというものに行き着きます。
元々、制作を請け負う際に、僕は特に契約書等を交わすことなく、打ち合わせ等も必要であれば資料の作成しますが、基本は口頭のやりとりだけで、議事録も残さない、というやり方をしており、それで今まで特に問題なかったのですが、この案件がきっかけで、このやり方の不味さに気づいた、というものになります。

経緯説明

当時、知人・友人で一緒に組んで仕事をしていたわけですが、ワンソース・マルチユースという理念をもとにとあるシステム展開をしていました。今では割と当たり前ですが、DBP(database publishing)ですね。そのときは、ひとつのデータベースから、紙orPDFカタログを発行するためのXMLファイル(インデザインで組み上げ)、ネット通販の商品一覧ページの生成が出来るシステムの構築を請けまして。金額はかなり大きく1000万案件で、クライアントさんは商社さんで、紙カタログとWEB通販のサイトでデータ修正が2回発生したり、それぞれの媒体でデータが違っていたり、それに伴う時間や費用のコストが問題となっていたため、カタログも必要範囲だけ出せるなら、それに越したことないし、通販サイトの商品管理が非常にラクだ、ということでご発注いただくことになりました。

 

順調な滑り出しだった。

このクライアントさんとは僕らが開催した製品案内のセミナーにご来場いただいたことがきっかけで、この理念に共感いただきご発注に至りました。
流れとしては2フェーズに分かれており、1フェーズ目はデータベース開発及びサーバーの設置とツールの使い方の説明(基礎)、2フェーズ目はECサイト(というか見積もりサイトか)の構築とDBへのデータの入れ込み(基幹DBとのつなぎ込み及びツールの開発)、インデザイン自動組版の講習、紙orPDFカタログのテンプレート開発といった内容だったと思います。1フェーズ目の作業は当時協力してもらっていた、システム会社さんがいまして、そちらの会社さんと一緒に動いていまして、1フェーズ目は特に何の問題もなく終了し、ご請求させていただくことになりました。
1フェーズ目は600万で2フェーズ目が400万という内訳でして、1フェーズ目の金額に関しては、我々は全く利益を乗せておらず、1フェーズ目の金額はそのまま協力会社さんにお支払いさせていただきました。

 

2フェーズ目の終盤になって

2フェーズ目のEC納品に向けて打ち合わせや制作を進めていました。
打ち合わせのなかで、仕様などを説明し、その仕様でいいのか、問題ないかを確認取りながら進めていったわけですが、一旦作り上げてクライアント側でチェックを受けた際に、2点要望が出てきました。一つは検索機能の追加ともう一つはデータベース側の既に納品した1フェーズ目の製品の追加機能でした。当然のことながら、両方とも要件になかったことなので追加予算が必要なんですが、こちらが「それは仕様変更、機能追加なので別途予算になります」と回答させていただいた途端に、クライアント側は「打ち合わせでこれらの機能がないことは聞いていない」(そもそもその機能つける予定ないんだもん説明しないわな)、「打ち合わせの議事録はないのか」と言われ、プロジェクトはストップしました。

 

エビデンスがない

プロジェクトはストップして、納品にならないからお金ももらえない(請求書の発行が出来ない)、でも機能追加や仕様変更も対応出来ない、という状況。今まで仲良く和気藹々と対応していただいてきた担当者は一切応答せず。メールを送ってもレスなし、電話をしても不在となり、会社を訪問しても会ってもらえず、全て「法務部」を通して話してください、となりました。
そして、法務部さんから言われたことは、「我々は以下のように報告を受けています」と。

 ・こちらの要請、要望を一切聞いてもらえない。
 ・勝手に案件を進めており、こちらの要望する開発内容ではない。
 ・実際に使える代物ではない。

これ聞かされてびっくりでした。担当者さんはセミナーで話した僕らのシステムの基本概念に理解を示し、会社に提案して、今回のシステム及びサイト開発にいたり、プロジェクトがスタートしたあとも、複数人でシステム担当者やサイト開発のデザイナー、コーダー、設計担当など、話せる人間と一緒に訪問して打ち合わせをおこない、説明をしてきていたし、ヒアリングも行っていたのに、要望を聞いてもらえない、勝手に進めている、とは・・・。もちろん、反論させていただき、「そのような話にはなっておらず、ヒアリングさせていただき、説明もきっちりとさせていただいて、Okをいただいた仕様のもとに進めている」と話を法務部の方にしたのですが、「それはそちらの言い分であり、こちらはそのような報告は受けていません。したがって、貴方の言い分は聞き入れられない。議事録や当社担当者との打ち合わせの議事録はないのでしょ?なら信用出来ません。」と言われグウの音も出ない。

そして、実際に使える代物ではない、って言われても・・・。実際にそのデータベースから出力したXMLファイルでインデザインで総合カタログ作ったし、その出力したファイルを自動組版でどう作るかも講習やったし、実際にサイトにデータベースの商品が反映されて見積書発行出来る仕組みも確認できてるし・・・。使えるか使えないかというか要望いただいたのはこういったことが内製化で自社で出来るようにしたい、という話でもあったし、それが出来るシステムだったので・・・。それは使える代物ではない、というより、導入したけど、使いこなせないと言ったほうが正しいのでは・・・。

 

法務部に再提案

法務部の方に、そもそもどういったシステムなんでしょうか?と聞かれ、「そもそもどういったものかも聞いてないんかい」と思いましたが、法務部の方にもう一度システムの概略や担当者様との経緯を説明し、フェーズの流れや打ち合わせでどういったことを説明してきたのかを説明しました。その法務部の方は「なるほど、それは便利なシステムですね。それを当社が御社に発注した、と。お互いに進めていくなかで、話の齟齬が生まれ、それが今回の件につながってるわけですね。」とある程度の理解は示してもらえました。そして、こちらも担当者に再度ヒアリングしてみます、と。

こっちはもう必死です。なんせ、このシステム及びサイト開発に全てをかけて、何ヶ月も開発して他案件なんてほぼやらずに仲間も取り組んでいたのに、この2フェーズ目の売上がないと、この先の自分達の報酬や家賃も払えません。1フェーズ目の600万はそのままシステム会社の横へ流れてますので、自分たちの利益は「0」です。本来なら、このトラブルが起きた月に納品でギリギリの日程で、月をまたぐとほぼ売上0円で1ヶ月生きていかないといけません。とはいえ、400万は逃すのは出来ない。

 

エビデンスになりそうなものをかき集める

そこからおよそ3週間くらいでしょうか、訪問して法務部の方とお話をしてテキトーにはぐらかされ、メールしても返事はなく、電話しても返事はなく。結局エビデンスがないといくら熱意等を伝えても無理かつ無意味であることがわかりました。そこで、法務部の方へのメールも含め、担当者の方とのメールのやり取りを掘り起こし、時系列に並べ、足りない部分や電話で話した部分や打ち合わせの部分は同席してもらったシステム担当やデザイナーと話をしながら、出来るだけ詳細な流れや経緯を説明する報告書を作ることにしました。
これが結構大変で、話を盛ったりは当然出来ませんし(それがバレた時が危ない)、過去のこちらからのメールを基軸にそれに対する先方の返事を反映し、そこに間にはいった打ち合わせや電話のやり取りを記憶から呼び起こし、記述していきます。元々記憶力は良いほうですが、全くこんなことになるとは想定していなかったので、メモ書きも残っておらず、意識もしてなかったので、かなり記憶は曖昧でしたが、確実性のある内容だけ記載し、なんとか報告書を作成。メールで送付し、更に郵送で送付して反応を待つことにしました。この時点でトラブルから一ヶ月経過しています。

 

今日はお返事いただくまで帰りません

送付してから1週間経過しました。何の音沙汰もありません。ここで郵便の内容証明を取得します。「届いてない」と言わせないためで、ここまで来ると、こちらの落ち度とかより、相手にしてやられた、という気持ちのほうが強いです(だって、打ち合わせ通りモノ作ってきて、急に手のひら返して、担当者は一切連絡してこなくなったわけですし)。とにかく何の反応もなく返事もないため、次の行動が取れません。このままズルズルと引き伸ばすつもりなら、こちらも法的手段に出るしかなく。でもそれはこちらもかなり痛手となるので(時間も費用も)避けたいところです。
なんとか法務部の方に連絡を取り付け、こちらがどれほど困っているかを説明し、法的手段に出るしかないけど、そうしたくないことをお伝えし、「今日はお返事いただくまで帰りません。お返事よろしくお願いします」とお伝えしました。また報告書なども再度出力して持参し、説明もしました。

 

突破:交換条件

先方法務部さんとお会して1時間半~2時間ほど話しました。こういった交渉事に於いては押し切ったうえで、こちらも一歩譲歩することで話が通ったりします。お支払いいただく交換条件として(向こうの後付のわがままだから交換ってのもおかしな話ですけどね)、検索の機能追加だけ対応させていただき、データベースへの追加機能はお断りすること提案しました。すると、ようやく先方も「経緯や流れなどはいただいた報告書でわかりました。お支払いさせていただくよう、弊社の上層部と話し合いします。その検索機能の追加を以て納品とする、と。」と支払いについて検討いただけるようになりました。そして入金もありました。
仲間からはこっちが譲歩したことについてボロっカスに言われましたが、頭下げて対応してもらい(そうじゃないと支払ってもらえないし)、協力会社さんに頼まないといけないデータベースへの追加機能は避けることができました(これ対応すると追加で出費だし)。結局、向こうはこちらに要望を無理やり飲ませたくてゴネていたんだろうけど、こちらがその意図に気づかずオオゴトにしていったので、向こうも一歩引いたということでしょうか。こちらの痛手は半端なく、2ヶ月ほどほぼ収入なし状態になり、精神的疲労も半端ない状態となりました。

 

まとめ

この経験はその後のディレクションや案件受注に大きく影響を及ぼすと同時に、人間不信に陥るきっかけになりました。
 ・仲良くてもビジネス。信用しすぎない。
 ・議事録は必ず残す。エビデンスはきっちり残す。
 ・口頭でのやり取りは危険。日本語は難しい、齟齬が出るので、空中戦(口頭でのやり取り)ではなく、地上戦(紙面等書面や資料でのやり取り)

今思えば、地元でもそこそこ大きな商社さんだったので、ゴネて言うことを聞かせるようなやり方をしていたのかもしれませんし、印刷系の営業マンとかだと言うことを聞いていたかもしれませんが、こちらはゴネられていることに気が付かず、真っ向から勝負して交渉していたので、向こうとしてはアテが外れたのかもしれませんね。そして、この担当者もこの件の翌年くらいには退職していますし、法務部の方も退職されました。それらが意味するものはわかりませんが、法務部の方は一度お会いしましょう、と言われた際に、あからさまに「◯◯の◯◯というケーキがなかなか手に入らないんですよねー」と地元で有名なケーキを言外に手土産に持ってくるように言われたので、「何様なんだ?」と思い、持って訪問したところ、「僕、転職しますので、次の仕事先で貴方に仕事出してあげますよ」的なこと言われました(結局、訪問したけど会ってもらえなかったけど)。完全にナメてかかってきてたし、こういうことをする社員さんがいるってことから、前述のことも恐らくゴネて最初の予算内で追加実装させようとして失敗したんじゃないかな、と。

このすぐあとにディレクター突破ファイル Vol.02:止まった案件を動かせ!が発生しており、この経験は早速活きましたね。
きっちりエビデンスを残してあったので助かった。

おまけ


今回もご用意w

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