久々の投稿です。
テレビ番組で「スカッと」する番組とか「突破」する番組とかあるじゃないですが。
あれって、なにかトラブルや困りごと、問題が発生したときに、どう対処して、それを回避、乗り越えた、解決したかって話なんですよね。

実はディレクターやってると、そんなことの連続です。
予算、人間関係、スケジュール、品質・・・作るものに似たものはあっても、一つとして同じ事例やパターンはなく。
都度都度、様々な事象が起きてくれます。

そんな都度都度起きた事象に対してどうしたのか、を詳しく書いていこうかな、と。それって他のディレクターさんのためにもなるでしょうしね。
プロジェクト体制図で事故を防いだ件。」も似たような内容ですが、こっちは最初から事故るのがわかっていた案件での対処なのでちょっと違うかな。
んじゃ、書いていきます。

 

経緯説明

まずは簡単な説明から。
状況としまして、WEB制作会社に入社して、とある企業さんの担当WEBディレクターとして、その企業さんの窓口やってほしいと言われました。
入ったばかりで状況はわからないが、どうやらサイトリニューアルは一通り終わったところだけど、まだ、完全に改修が終わりきってなくって、細かいところの調整をおこなってもらいつつ、担当を引き継いでほしい、ということでした。

 

話が違う!

さて、実際にその「とある企業さん」にお会いして、色々とお話や状況を聞きながら、やりかけや微調整を進めて・・・ってそんな状況ではなく、これ「大炎上中」のプロジェクトでした。時折、お客さんのわがままに過ぎず、いや、それはお客さん側の問題ですってこともあるのですが、今回は完全に制作側の失態でした。

①説明責任を果たしていない
 リニューアル前はフルスクラッチのシステムでリニューアルでWPを使ったらしいのですが、CMSで出来ること出来ないことを説明しないままに導入していた。
②仕様上、出来ないことを出来ると言っている
 上記と同じですが、先方の要望を叶えようと思うと組み直しが発生するor矛盾する仕様になる。
③担当者が何人も変わってる
 でも引き継ぎが出来ていないから会話が成り立たない。
④要望を伝えても反応が遅いor会話にならない
 上記に加え、現行の担当者がディレクション経験のないコーダーさんで、更に言えばお客さんと直接やり取りをしたことないので、営業ノウハウ的なものも皆無。
⑤あの会社はおかしいから
 という理由で自分らの至らない点をクライアントがおかしいだけだから、と蔑んでバカにしてるだけで、相手にしないようにしていた。

といった状況で、僕がお客さんを訪問した際には、空気はピリピリ。とにかく「話が違う」、「聞いていない」、「打ち合わせに応じてくれない」と言われるばかりで、こっちも「聞いている話と違う」としか言えない状況でした。

 

そうじゃないだろw

とまぁ、このような状態で、このままだと契約打ち切るよ、という段階でした。
会社に戻り、会社側に説明を求めますが、会社側に言われたのは、

言い訳①
 プレゼンしたのは5月で、返事は9月入ってからで10月公開と言われて無茶苦茶なスケジュールでやらされた。
言い訳②
 当初、こちらが提案したもののなかでそのまま採用されたわけじゃなく、新たな要望や変更で時間がかかった。
言い訳③
 こちらの説明を理解してもらえない。体育会系なノリでこちらもついていけない。休みでも平気に連絡してくるし対応を求める。
言い訳④
 スカイプや携帯で打ち合わせしているから、打ち合わせはそれで応じてることになってる(当時はリモートなんて珍しい方法だった)

といった感じで、どれだけ対応するのが大変か、ということを聞かされましたが、

そうじゃないだろ①
 うん、それならそれで、そのスケジュールじゃ無理だから、と何故交渉しなかった?何故引き受けた?引き受けた=出来るっていうことを言ったようなもんじゃん?引き受けた以上、こっちのミスだよ。
そうじゃないだろ②
 そんなもん、提案したものがそのまま通るかどうかわからんし、そこを打ち合わせしながら進めて着地点見つけていくわけで。なんで、鵜呑みに引き受けたのさ。技術確認したの?
そうじゃないだろ③
 それはこっちの説明が悪い。相手は素人さんなんだもん。伝わって初めて説明出来たってことだぜ?それにお客さんは土日営業日の会社だもん。土日に電話してくるのは当たり前だろw
そうじゃないだろ④
 いや、打ち合わせ慣れしているメンツならいいけど、話し慣れていない者同士がリモートで打ち合わせしても会話つながりにくいだろwまして、向こうはリモート経験ないんだし。

ってな感じで、「はぁ~~~っ」これはハメられた、と思いました。交渉ごとを全くしていないのね・・・と。

 

このままではダメなので、状況の整理から

そんなサイトリニューアルプロジェクトだったらしく、これは炎上して当たり前だな、と・・・。
そこで、この状況を覆す、改善すべく何をしたかというと、

改善①
 お客さんからのメールや連絡に対して、まずはすぐに「取り急ぎのお返事」をして、連絡を受け取りましたよ、という返事を返す。
改善②
 CMSの仕組みも含め、今使ってるWPがどういったものなのか、相手の業界に置き換えて説明する資料を作成し、用語の説明とかもイラスト化して出来ることと出来ないことを説明。
改善③
 お客さんには申し訳ないが、再度、要望を聞いて、何が出来ていて、何が出来ていないのか、どうしたいのか、を再確認して、全てにおいて技術確認をする。
改善④
 毎週、決まった時間にお伺いする「定期訪問&定期打ち合わせ」を約束することで、安心感を持ってもらう。

①に関しては、お客さんからの要望に対して、何も返事をせず、出来てから「要望のもの出来ました」で返事を返すので、お客さんとしては、メールが届いたのか、読んだのか、出来るのか、出来ないのか、不安になってしまう。まずは、「取り急ぎのお返事ですが、ご要望を受け取りました。追ってご連絡します」とか「一先ずのお返事」を返すことで、お客さんは随分と安心してくれます。②に関しては、今後のお付き合いをしていくなかで、理解をしておいてもらわないと進まない部分があるので、WordPressやCMSというものを理解いただいたり、今までの担当者が何故出来なかったのか、前回のフルスクラッチのシステムに比べ割安だったのか、という理由を理解してもらいます。ただ単にわがままを言ってるわけではなく、出来ない、という返答に納得がいってないだけで、出来ないなら、出来ない理由を述べよということだけなんですよね。

③に関しては、今までに何人も担当が変わっている中で引き継ぎもされていない。そんな感じなので、こっちがちゃんと「このプロジェクトに真剣に取り組みますよ」という意思表示でもあります。状況の整理をおこないながら、出来る/出来ないを技術スタッフに投げるためにも仕様や要望している挙動の確認などをおこない、リストにまとめていきながら、これは出来る、これは難しい、これは代替案でこれはどうか、これに関してはこんなデメリットがあるから実施しないほうがいい、などセグメントしてお客さんにわかるように。④に関しては営業経験ある方ならわかりますよね。顔を合わせる回数は多いほうが、心理的に警戒心が下がるというか好感度は上がります。既に当時働いていた会社の社員というだけで、印象は最悪です。ザイオンス効果で心理ハードルを下げて、信頼感を勝ち取ります。

こんな感じで上手く回りだしたタイミングで「残金回収してこい。」

上記の方法がまぁまぁ上手く行きまして、順番に残りの機能実装やご要望を叶えつつ、プロジェクトを進めていたら、社長より「残金の回収をお願いします」と突然言われました。

は?」です。

どうやら、リニューアルが完全に終わっていないので、請求も全額支払い出来ないという話になっていたようです。まぁ、よくある話です。
とりあえず担当者として、この案件のプロジェクトの総額といくらお支払いいただいているのかを経理さんに確認して調べました・・・びっくりする金額のプロジェクトで、3分の2ほどお支払をいただいている状況でした。

今までWEBサイトの制作で請け負った金額って軽自動車~中型乗用車(安めの)くらいだったのに、今回はかなり高級車レベルの金額(といっても大台の8桁にはいってませんが)です。そんな大きな費用をもらっておきながら、こんな進め方してたんかい!と情けなくなったり、申し訳ない気持ちでいっぱいに・・・。本当に申し訳有りませんと。そして、こんな状況なのに「残金払ってくださいといえるのか・・・?」と。まだ要望とか精査して、今から一つずつ実装というタイミングですからね。恐る恐るお客さん側の担当者さんに聞いてみました。

「すいません、このような状況ではありますが、会社より、残金のお支払いをお願いします、と言われておりまして・・・」
「うん。それはわかってるんですけど、今の状況ではまだお支払い出来ないですよね。お支払いしたいけど、まだ全部出来てないんだし。」
「ですよね~・・・(どうしよう・・・)」

ということで、上手く回りだした、と思ったプロジェクトですが、金を払う/払わない(払いたくても払えない)でまたもや暗雲立ち込める関係性になりそうな雰囲気に。
しかも、いただいた要望は出来るものもあれば、仕様的に無理なものもあるし、かなり時間かかるものもあったり・・・。

 

払わない(払いたくても払えない)メカニズムを考えてみた

担当者さんにそう言われ、たしかにお客さんの言う通りです。完成していないのに全額払うのは無理、そりゃそうだ。
でも、会社からは残金の入金をしてもらってこい、と厳命されています。入社したばっかりだし、試用期間内で成果出さないと今後の給与がね・・・。
会社と客の板挟みとなったわけですが、相手のお客さんの言葉を思い返しつつ、どうしたら払ってもらえそうかを考え、分析してみました。
 →払いたくても払えない、という、セリフ。担当者さんは払いたいと思ってくれている。ということは俺には好意的な状態。
 →好意的な状態だけど払えない=つまり向こう側に払えない理由や要因がある。
 →会社規模からして、お金がないわけじゃないだろうから、サイトが出来ていないのに支払うという行為を会社に要請しづらいのでは?(仮説)
 →担当者さんの会社内での立場を理解したうえで、担当者さんが上位者や周囲を説得しやすい環境を作り、お金を支払う理由を作れば払ってもらえるかも

というところではないか、と。担当の方はお金は払いたいけど、何かしら上の方々に払うのに値する説明や、払うに値する証拠?的なものや、あとは払ったほうがメリットがあるような理由や状況があれば払っていただきやすい、のか、と想到しました。

 

突破!相手が払いたくなる、払いやすくなる状況を作ったし、考えた。

早速、交渉に入りました。
このくらいの規模の会社さんになると、上期、下期で予算組んで制作等をおこなったり、部署ごとに予算分配されており、役所などでもよくあることですが、その期内に「用意された予算を使い切らないといけない」ということが多々あります。そこから探っていきました。
「WEBサイトの残金の件ですが、おそらく10月からこの3月の下期の間での予算でお支払いいただく予定となっていたんじゃありませんか?」
「そうですよ。」
「(よし、予想通り!)ですよね。わかります。ただ、担当者様としては、本当なら、この3月末までの間に予算を使い切らないと会社的に、というか部署的にまずいのでは?」
「そうなんですよ、だからどうしたもんか、と・・・」
「(よーし、ノッてきた)ですよね。そこでお聞きしたいのですが、担当者様がお悩みになっているのって、支払いたいけど、今の状況で支払う理由や会社に対して説明がつかないからで、そこの説明がつくのであれば、お支払いいただけるというか、お支払いしやすい状況になりますか?」
「そりゃもちろん!」

「わかりました。ご提案ですが、今、いただいているご要望のリストのなかで実現可能なものは全て実現させて、難しいものは代替案にて実現させます。で、それを間違いなく実行します、という覚書を作成します。その覚書に当社の代表の名前と捺印をして、御社と交わさせていただく。あとは僕を信用いただくしかありませんが、僕が責任持って、リストにあるものは実装いたします。その覚書と、まだお付き合いさせていただいて日は浅いですが、僕の今までの信用を以て、上の方とお支払いのご交渉をおこなっていただけますでしょうか?新たに交わした覚書があることで、担当者様の面目も立つと思いますし、期の変わり目で支払いをしなければいけない、という説明もつくのではないでしょうか?」
「なるほど、それならいけるかも!」
という話になり、早速覚書を自身で作成し、会社側を説得。もちろん、これでお金が入金されるなら、ということで会社側も了承し、お客さんにも提出し、無事、書面を交わして、翌月にご入金いただきました。

 

まとめ

結局、何をしたか、というと
 ・信用回復につながることをとにかく実施。
 ・相手の立場や相手の置かれている状況を冷静に分析
 ・自社の目的が相手のメリットとつながるような理由を考えて実行
といったところでしょうか。

このあと、まぁーいろんなことが起きましたが、僕とこのお客さんとの関係は良好でお付き合いさせていただいています。

おまけ


これ聞きながら読んでみてくださいw

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