久々の更新です。
今回は話題のフリーランス新法についてです、と言いつつ、僕の周りで知ってる方は誰もいなかったです。下請法の話題が出た際に、「今度、フリーランス新法というのが施行されますよね」って話をしてみると、驚かれる方が多かったです。マスメディアでバンバン告知してるわけでもなかったですし、殆どの方には関係のない法令でしょうから致し方ないかな、と。
まず、この法律の対象者ですが、公正取引委員会のサイトを見ると「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」とあります。で、「フリーランス」とあると、「法人化していない、一人で仕事をしている方」と思われるかもしれませんが、この法律にいう「フリーランス」には「従業員のいない一人法人」も含まれます。今の御時世ですと色んな業界にそういった方がみえるとは思うのですが、イラストレーターさんや、デザイナーさん、僕みたいなディレクターさん、カメラマンさん、あとは、結構多いのが、大工さんや電工さんなんかにもこういった方が多いのではないかな、と。
公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/
こういった法律が配備された背景には、働き方が多様化して、時間や場所に捕らわれない働き方っていうんですかね、育児や介護などの関係で外で働けないからって方もいたり、自分の実力を試したいかたって方もいたり、中には僕みたいに「組織で働くのが向いてない」って方もいたり（ほんと組織で働くと続かないんだよね・・・）、背景や状況は色々ですが、そういった働き方が増えたわけですが、どうしても個人対企業という構図になってしまい、立場が弱いフリーランスの方が不当な扱いや不利益を被ることがないように、という目的の元に法整備されて2024年11月1日に施行されました。
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下請法とフリーランス新法の違い
さて、似たような法律に「下請法」があります（びっくりですけど、未だに下請法の存在を知らない方や企業さんもいるんですよね・・・）。広告代理店に勤めている営業さんからクライアントさんの愚痴を聞くこともありますが、聞いていると「それ、下請法違反なんだけど。そのクライアントさん、下請法の存在を知らずに言ってるんじゃない？」なんてことも。
下請法自体の狙いは今回のフリーランス新法と同じで、業務の受託側が不当な不利益を被らないようにするためのものです。20代のときにもフリーランスをやっていたのですが、余りにおかしなことを言ってくるクラインアントさんがみえたので「発注先がおかしなこと言ってきた際に何か法律で対抗できないか？」と思って調べたら「下請法」ってのがあるじゃないか、と。このときに初めて存在を知りました。
下請法の場合は、「発注側の資本金が一定の金額以上の企業の場合」に適用される法律です。（発注側の資本金の問題であって、受託側は法人、個人事業主関係なくなので、フリーランス新法関係なく発注側がある程度の規模の企業さんだった場合、その取引は下請法に関わってきます）
詳しくは下記を参照してください。
ポイント解説 下請法（下請代金支払遅延等防止法）
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf
フリーランス新法の内容
では、どんなことが義務付けられているのか？というところですが、全部で7項目あって、条件によっては該当しない項目もあるみたいですが、上記にリンク貼ったサイトから引用して記載します。
書面などによる取引条件の明示
フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法（メール、SNSのメッセージ等）で取引条件を明示する義務があります。明示方法は、口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。
とあります。要は何かしらエビデンスや発注書、またはそれに代わるものを残せってことですね。口頭で曖昧な依頼は多いですからね。口頭で言われたとしてもメールや文面でください、って僕もよく言ってますし、何なら電話の内容を電話のあとで、メールにして相手に送ったりして証拠を残すようにしています。
報酬支払期日の設定・期日内の支払い
報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。
とあります。基本は末締め翌末支払いのサイクルをよく聞きますが、そうでない企業さんもあります。入金されてからでないと払えないということで末締め翌々末払いなんていう制作会社も存在します（僕が以前いた会社は、これは社員の給与ですが「給与支払いが2ヶ月後」でした。採用通知には末締め翌末支払いって書いてあるくせに、イザ入社したらで末締め翌々末払いで丸1ヶ月タダ働きの感覚でしたね）。昔、付き合いのあった印刷会社は30万円以上は手形で末締め3ヶ月先の支払いだったような気がするけど・・・これってアウトになるんかな？
7つの禁止行為
フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、7つの行為が禁止されています。
①受領拒否 ②報酬の減額 ③返品 ④買いたたき ⑤購入・利用強制 ⑥不当な経済上の利益の提供要請 ⑦不当な給付内容の変更・やり直し
②は経験ありますね。⑤はある広告代理店の新卒営業マンの勘違い発言で「『ウチの仕事ほしいのにウチの親会社の製品使ってないなんて本気で仕事取る気あるの？』って業者に言ってやりましたよー」なんて言葉も聞いたこともあります（本当にいるんですよ、こういうの平気で言える方）。これもまぁ有り得ないですね、モロ違反です。⑦は納品後の変更なんで、仕様変更ですね。たまにユーザーの要望に対して『気持ちよく対応していただけた』なんて美談になっていることありますけど、単なる「仕様変更」ですからね。あくまで「好意」であって、やって当たり前なんて思ってはダメです。追加費用当たり前の内容です。
ディレクター突破ファイル Vol.03：400万払ってもらえない？ なんてモロに①と⑦に抵触ですね。というか大きな企業さんなんで、下請法違反ですけどね。
募集情報の的確表示
広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
受注したら全然内容が違うっていうパターンですね。意図的に虚偽情報を掲載している場合はもちろんアウトですが、発注側の求めるゴールにたどり着くためにどういった作業があるか、というスコープ作業の見落としがあって結果的に虚偽情報になってしまっていることもあるような気もしますけどね。
育児介護等と業務の両立に対する配慮
フリーランスに対して６か月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。また、６か月未満の業務を委託している場合も配慮するよう努めなければなりません。
これはもうそのままですよね。僕の経験では制作会社時代にフリーランスの女性デザイナーさんにWEBサイトのデザインをお願いしたりしていたんですけど、短納期が多く外注の方々に作業時間を確保していただくためにも、早め早めに指示出しすることが多く、結果、電話やスカイプでリモートで打ち合わせすることが多かったです。その際にまずは打ち合わせの打診をするんですけど、日中は家事やお子さんのことで色々あって落ち着いて話が出来るのが夜になったりすることも多く（その家庭ごとに時間がありますからね）、お子さんの寝かしつけ終わって、色々と片付けが終わった23時から打ち合わせしたこともあります（旦那さんが横でラーメン食ってて、ラーマンをすする旦那さんに挨拶しながら打ち合わせしたときは笑いましたけど。）※もちろん、23時はこちらから指定したわけじゃなく、先方の要望時間です。
ハラスメント対策に関する体制整備
ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応のための体制整備などの必要な措置を講じなければなりません。
実を言うと、これが一番大事なんじゃ？とも。フリーランスって一人なんで、マネジメントや交渉もひとりでやらないといけないことが多く、金額交渉や契約条件とかを企業の担当者とおこなっていくのは大変です。最近ではフリーランスを束ねてマネジメントしてくれる会社さんもあるみたいですね（派遣会社に所属している派遣さんがそのままフリーランスになっているイメージ）。本来の業務（デザイナーならデザインで、コーダーならコーディングで悩む）ならいいんですけど、こういったマネジメントとかになると難しかったり煩わしいことも増えて労力がね・・・（フリーランスにはつきものなんでそこは頑張ろうよ、とも思いますが）。
なんだかんだ言って「人対人」なんで、親密度というか、人間関係を築こうとして会話をしていくんですけど、どこでその境界線というか琴線というかに触れるかは人それぞれなんで、難しいなぁという部分は感じたことはあります。何か問題が起きた時にクライアントには相談しづらいし、クライアントはクライアントで自社の社員を守る義務もあるわけですから、フリーランス一人で企業相手に戦えるか、というと気力体力が続きません。そこで時間と体力を浪費するなら他のクライアントを探すなど次のアクションを起こすほうが重要だったりもしますけど、これもまた結構キツイんですよね。担当者が複数いるクライアントさんですと、人によって距離感が違いますし、性格も違いますし。悩みどころです。社員に向けては教育や相談窓口はあるんですけど、外部に向けてそういった窓口ってあまりなかったりします。
発注側の企業が対応しないこともあるので、そういった場合は泣くか離れるしかないのかな、と思っていたあら、こんな窓口が設置されたそうです。
フリーランス・トラブル１１０番 ホームページ
https://freelance110.mhlw.go.jp/
あ、それと、女性クリエイターに対するセクハラも割と耳にします。昭和のオッサン連中のセクハラ発言聞いているとドン引きします。
中途解除等の事前予告・理由開示
フリーランスに対して６か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合、少なくとも30日前までに、①書面②ファクシミリ③電子メール等による方法でその旨を予告しなければなりません。
そうですね。突然の有無を言わせない解約とかはやはり困ります。30日前と記載されていますけど、引き継ぎ作業が発生する場合は、もっと前に通達されないと無理な場合もあるでしょうね。
以上がフリーランス新法の概要になります。
参照：公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会
罰則規定について
違反した場合、発注事業者は行政の調査を受けることになり、指導・助言や、必要な措置をとることを勧告されたり、勧告に従わない場合には、命令・企業名公表、さらに命令に従わない場合は罰金が科されます。
この辺りの措置に関しては下請法と同じなのかな。企業名公表なんかは下請法でも出ますね。罰金に関しては
・第二十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
とありまして、ほかには
・第二十五条法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。
とありますので、これ、企業だけじゃなくて、担当者も罰則受けるみたいです。
出来てよかった？それとも不要な法律？
どれくらいの抑制力が働くかわかりませんが、個人的には制定施行されてよかったなとは思います。Xなどでも色々な意見ありました。色々と「これはやったら駄目」という禁止行為が明文化されていることで、フリーランスの方は「それは違反行為ですよ！」と指摘出来るわけですが、逆に言うと、「めんどくさいことが増えて、企業側がフリーランスを使いたがらなくなる」という意見はよく見ました。現状でクライアント様と良好な関係が築けているフリーランスさんの中には、そう思う方もいるかもしれないですね。企業側が「発注者やいろんなことに気を回さないといけないのは面倒だから、だったら最初から制作会社など企業に頼んだほうが煩わしくない」と。確かにありえる話です。気軽に頼める扱えるのがフリーランスのメリットの1つでもありますからね。
他には「どうせ守ってもらえない」という意見もちらほら。これに関しては、わかりますけど最初から諦めモードも違うでしょ、と。確かに「ちょっと自分が我慢すればいい、指摘して下手に機嫌損ねて仕事を失うかもしれない」、と思われる方もいるでしょう。技術系の方には金額や契約の交渉事が苦手な方もいるでしょうね。でも、そこに甘えてくる（つけこんでくる）企業はあまりいいクライアントでもないですし、自身が潰れるくらいなら、言ったほうがいいと思いますけどね。牽制くらいにはなるんじゃないでしょうか。（20代のときには騙されてタダ働きもしたことありますけど、性善説で仕事出来ないですよ、ホント）
誤解しちゃいけないフリーランス
上記のように「フリーランスを守ってくれる法律」が出来たことは喜ばしいわけですが、「フリーランス法を盾にして」いい加減な仕事をして逃げるようなフリーランスが増えるのはごめん被りたいです。これは下請法にも言えますけどね。また、「フリーランスは儲かる」みたいなこと言う方もいますが、保障がなにもないですし、本来であれば会社が負担してくれている費用を全額払うわけですから支出も増えます。
おまけ
そういや、愛知県？名古屋？の商取引で冗談交じり（皮肉？）で言われている「三たたき」って、モロに違反行為じゃないの？とも思うわけで。
最近はあまり聞かなくなったけど、去年かな。知人の制作会社の社長さんから三たたきをされたことを聞いたな。請求書提出してから価格交渉があったって。お断りしたみたいですけどね。ちなみに「三たたき」って何かというと、「見積もり時」に値切って（＝叩いて）、発注時に値切って、請求書もらった時点で（支払時で）値切るって方法で、3回叩くので「三たたき」って言われます。これどこで覚えたんだっけな・・・。どこかでそう教えてもらったんだろうけど、どこで聞いたか教えてもらったか覚えてないや。知ってる人もいたから僕の身近な人が言ってただけではなさそうだしなぁ。商売上手とか商魂たくましいんじゃなくケチなんだよね、基本的に。それと、モノづくりの街だけど、ハードにはお金出すけどソフトにはお金出さない印象がありますｗ
「三たたき 値切り」の検索結果
フリーランス新法 参考サイト
フリーランス・トラブル110番【厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営】
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律（フリーランス・事業者間取引適正化等法）等に係る取組について｜内閣官房ホームページ
フリーランス新法とは？対象や事業者が取るべき対応、違反時の罰則について解説 | 電子契約サービス「マネーフォワード クラウド契約」
フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組 | 公正取引委員会
【2024年11月施行】フリーランス保護新法とは？下請法との違い・フリーランス支援の法整備に向けた動きを分かりやすく解説！｜すすむ・はかどる、契約学習「契約ウォッチ」
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律（令和五年法律第二十五号）｜e-Gov 法令検索