※めっちゃ長いです。もしかしたら後日半分に割るかも。

数年前に印刷会社さんより、「WEBの仕事を受注出来るようになりたい!」とのことで、その会社さんに向けて講習を月2回(当初は週1回を提案していたが、その時間が取れない、とのことなので・・・←この時点で「ナメてるなー・・・そんな甘くないよ?」って感じでした。)担当することになりました。

僕が講師に選ばれた理由として、

 ・WEBディレクターとしてフロント業務も行っていたため
 ・印刷会社のコンサル的な業務の経験あり
 ・印刷業界の出身(印刷会社の出身ではないですが)

といったところでしょうか。
講習内容も全てオリジナルで回数もどういった内容をどの順番で伝えるかも重要なため、結構、頭使って考えました。

今回の講習の難しさは「WEBリテラシーが低い(というか皆無)」ということもありますが、それ以上に、

 ・印刷業界の薄利多売体質や金銭感覚を変えられるか(まして、パチンコチラシメインじゃな・・・)
 ・ディレクター業務まで覚えないと意味がない
 ・「提案」ということを出来るようにならないといけない

WEBの知識を教えることも必要ですが、この上記3つを覚えてもらわないといけない。
でも、「生徒とはいえ、お客さんなんだから、機嫌を損ねるようなことは言わないこと」とか、
「印刷業を悪く言わないこと」「とにかく仕事が取れて売上が上がればいいので、それを最短で」という非常に
「やりづらい」状況での講習になりました。

なぜ、上の3つが必要だったのか、と言いますと・・・

印刷業界の薄利多売体質や金銭感覚を変えられるか

まず、ここなんです。
かならず弊害となる部分。
僕も何度も経験してきたし、味わった。

◯01.金額を上げることを「悪」と思っているフシがある

印刷会社経由でWEB案件を受けると「は?」という金額になることが多い、でも同じように広告代理店経由で受けると「まぁ、こんなもんだよね」という金額だったりする
(必ずしもそうとは限らないけれど、よくあるパターン)。
印刷会社の営業マンってのはなぜか金額を上げることを「悪」と思っているフシがあり、金銭感覚が非常に少額な価格帯に慣れていることが多い。
理由は簡単。
チラシ1枚単価1.2円×枚数何十万枚とかで計算します(50万枚刷って60万円とかね)の世界なため、円や銭の世界で闘っています。
円だけならまだしも「銭」の世界です(別にそれが悪いわけじゃないですが)。
ちなみに、僕が印刷業界脱却した理由は儲からないし、「銭」で競合とバトルすることに疲れたから。

◯02.印刷費用にぶっこみで計算

そして、印刷業界全般、その傾向があるのですが、デザイン代や校正費用、営業マンの打ち合わせ費用などの工数を印刷費用にぶっこみで計算してしまうので、
作ったはいいけど赤字なんてことはよくあります。仮に一般的に言われている金額当て込むと、
紙代=印刷費用の6割 と言われており、印刷業界の営業マンが乗せる営業経費は一般的に2割です。
そうなると、60万=50万枚×1円×営業経費0.2円 となり、この内30万円(50×1.0×0.6)は紙代で残り30万円でデザイン代や営業経費を出します。
この枚数ならそこまできつい数字にはならないですが、枚数を減らせば当然利幅はかなり厳しくなります。

◯03.自分で自分の首を締めながら営業展開

なら、デザイン代とか入れて見積もればいいじゃん、と思うでしょうが、
競合他社も自分で自分の首を締めながら営業しているので、そんな金額だと仕事もらえなくなる、という恐怖感があります。(※1ここ重要。あとで出てきます

それに対してWEBは多少値崩れはしているものの、ディレクション費用からデザイン費用、コーディング費用ももらいますし、コーディングもjsやボリュームに依って変わります。
例えばLP1枚にしたって、そのボリュームや長さ、構成なんかでも変わってきます。当然、それらが変わればWEB側は金額交渉をしますが、印刷側はこのサイズのデザインはこれ!と
明確に金額を定めており、枚数に依って印刷単価が決まっているため、金額交渉がしづらく、また、金額を上げようなんてことも思わない。

◯04.仕事は取ってくるけど、利益は取ってこない

知人の印刷会社営業とWEBスタッフでこんな会話がありました。
「この作業なら2~3万でできるよ」→「お客さんへ提示額:4万円」→「は?こっちは工数を工夫して下げてこの金額にしたのにお前らが数字のっけなくてどうするんだーーーー!」
という内容です。金額を乗っけるのは「申し訳ない気持ち」になるそうです。いや、自分の仕事に誇りを持てよ。会社ってのは利益を追求するのが目的なんだが。
客したらいい業者かもしれんけど、悪いけど、こんな営業マン客から見ても「使えない営業」です。(ちなみに僕なら先ず10万は提示する作業内容)(※2ここ重要。あとで出てきます

まだ、外部の制作会社さんとかを使ってる分には外注費が念頭にありますから、いいとは思うんですが、内製で自社にデザイナー抱えてたりすると、そこへの経費は一切考えません。
だって、営業ですからね。仕事取ってナンボなんで、受注したらあとはデザイナーにお任せ状態で、お客さんから変更・修正出てきてもイエスマンでデザイン部に丸投げです。
そう、彼らは営業であり、仕事を取ってくるのがメインであり、あとの仕事はサブ的な要素が強く、個人の性格に依るところになってしまいます。

今まで印刷の仕事だったから、印刷会社の営業マンが違う種類である「WEB制作受注を始めたら儲かる」にはならなくて、
この悪しき風習や習慣、感覚を変えないと、結局、同じことの繰り返しであり、「WEBももうからないじゃん」ってとこに行き着くのが見えてる。

ディレクター業務まで覚えないと意味がない

「04.仕事は取ってくるけど、利益は取ってこない」に書きましたが、基本的に「営業ですからね。仕事取ってナンボなんで、受注したらあとはデザイナーにお任せ状態で、お客さんから変更・修正出てきてもイエスマンでデザイン部に丸投げです。」なので、社内の経費工数は無視です。

◯01.責任転嫁

印刷会社の規模にも依りますけど、社内に制作部を抱えている場合、「仕事が取れないのはデザイン部/制作部の腕が悪いからだ」とわけのわからんことを言う営業もいますし、
「売上が低いのはデザイン部や制作部だから、そこの部署は必要ない」とかいうクズもいます(あえて言おう、クズである、と)。
ま、これらは実際に僕が言われたことですけどね。腹立ったんで、翌日からスーツ着て飛び込み営業かけました(結果これがきっかけでディレクションを始めるわけですが)

また、仕事が取ってこれないからと言って、デザイン部を使ってセミナーとかやっても意味ないですし、公的なコンペにやたらと応募させるのも違います。
それがデザイン部の技術力のPRであり、デザイン部発信なら応援しますが、「仕事が取れない→デザイン部になにかやってもらおう→デザイン部でチラシ作成講座を無料で開催→人集まる→集まった人たちに営業をかけよう」だった場合、デザイン部の負担にしかなってないことがわかります。

だって、無料のセミナーの時点で収益性は0だし、集まった対象は「自分たちでチラシを作ろうとしている方々」で、その方々に向けてのセミナーですから、基本的にはお客にはならないですよね。
完全にターゲットと戦略を見誤ってます。(※3ここ重要。あとで出てきます

◯02.いきなり客と交渉は無理

社内のデザイナーチームのリーダーとかがディレクションまで出来ればいいのですが、その体制ですと、打ち合わせの人数なんかで結構な工数がかかってしまい、
印刷会社内のデザイナーさんなんかだと工場生産のようなスピードでデザインしていることもあり、どちらかというと、
内部スタッフのディレクションやマネジメントで忙しく、なかなか難しい状況です。

◯03.効率から考えると、営業マンがディレクションを兼務するのがいい

そうなると、やはり効率がいいのは、営業マンがディレクションをやること。
デザインに関しての知見もあるし、作業に関しても全くの素人ではない(はず)なので、フロント業務を含め、デザインを推してきたり、金額交渉をしたり、納期交渉をしたり、予算管理をしたり、進捗管理をしたりなどなど。もちろん、営業業務のほかに掛け持ちとなるとかなり忙しいでしょうが、そのくらいしないとデザイン部がパンクしてどのみち案件回らないし、外注に出すにしても、自分はお客さんに報告するために状況把握も必要だし、知識もいる。相手がWEB制作会社だった場合、自分たちの価格構成では通らないから、お客さんから金額の妥当性の説明を求められるだろうし。

ディレクターやフロント業務には駆け引きや交渉はつきものです。
それを普段、社外の方とあまりやり取りをしない内部スタッフの方にまかせてしまうと、良いように言いくるめられたり、おまけの作業を追加されたり(ま、ここは営業マンが窓口やったほうがひどい場合もありますが)そういった弊害を被らないためにも、デザイナーさんの仕事の軽減のためにもディレクションを覚えて頂く必要があるわけです。

印刷会社の営業マンがWEB制作を受注しても、ディレクターやディレクション出来る人物がいなければ、話がまとまらず、おかしな方向へ動いたりすることもあります。その際に、どうしてもディレクターの部署が作れないなら、営業マンがディレクションをやるべきであり、ディレクションをやりながらデザイナーと関係性を強固にして、融通が効くような体制を構築すべき。最初からデザイナー任せではデザイン部も辟易とします。

「提案」ということを出来るようにならないといけない

これが最重要、というか、これが出来ないなら、なにやっても一緒。
昔、読んだ「印刷業界あるある」みたいな本にもありましたが、印刷業界営業マンはとにかく「企画の提案」が出来ない。
なんで「企画の提案」が出来ないか?というと・・・

◯01.バブル時代の印刷会社

僕もバブルの時期は学生だったので聞いた話ではありますが。

1.印刷会社の営業は棚ぼた形式。
 とくに営業をかけなくても、お客さんからバンバン電話がなって、勝手に仕事が入ってきたため、特に提案や企画を考える必要がなかった。

2.大量消費時代で何もかもが緩かった
 それこそ、お客さんの会社にいれば、次から次へと声をかけられ、それは尽く受注となり、失敗して刷り直しをしてもその費用を追加でもらえたりすることもあった。

3.この時代に育った社員たちの現在
 そうなんです。ここです。この時代に育った社員たちがそのときの営業成績を基に会社の上役にいたりするんだけど、自分たちもやってきてない企画や提案、戦略立案を部下に教えられるわけもなくw

◯02.WEBはお客さんも詳しくないことが多いから、まず企画や提案がスタート

上記のことから、企画や提案は苦手だし、そういった風土が企業にあります。
で、WEBってお客さんも詳しくないことが多いから、大体は「WEBでなにか仕掛けたい」「目的はこれ」「予算は大体これくらいで(予算ない場合もあるけど)」っていうことを言われて、そこから、そのゴールに向けての最適解を考えないといけないんです。でも企画や提案をしたことないし、そういった文化もないから、何をどうしたらいいのかもわからない。結局、WEB制作会社に相談して、言われたことをただ伝えるだけのメッセンジャーになるから、お客さんになにか聞かれても答えられない、わからない、ばっかり。ここで安易に答えると、それはそれで深みにハマるし。

さて、伏線回収ではないですが、

◯※1ここ重要。あとで出てきます

競合他社も自分で自分の首を締めながら営業しているので、そんな金額だと仕事もらえなくなる、という恐怖感の部分。
これ、提案力がないからなんです。なんでか、というと、印刷自体は機械があれば出来るし、特殊な印刷方法や特殊な紙や手の込んでいる印刷物でなければ、大体どこの会社で刷っても多少の金額の差がある程度です。
つまり、「差異化」が出来ないんですよね。印刷のレベルや色にこだわりがあっても、そこをお客さんが理解出来なければ意味がありません(僕は色を気にするタイプですが)。
そんなことより、金額が大事だよ、と言われてしまった場合、仕事を取るために金額を下げます。ここで、企画や提案力があれば、価格を下げずに済んだかもしれません。

旧体質の印刷会社の社長の中には「印刷機が回ってないと不安になる。逆に毎日、印刷機が動いていると安心」という方がいます。
まるで、刷ってるチラシがそのまま紙幣の感覚になるようですね。でも、利益度外視で売上しか見ずに印刷を取ってくる営業マンがいた場合、回せば回すほど赤字になります。

◯※2ここ重要。あとで出てきます

上の部分と少し重なる部分ありますが、安いだけで、自社になにも提案をくれない会社や営業マンにはやはり相応の対応しかしないもんです。まして、利益計算やそういった利益や数字に対して認識の弱い、執着のない営業マンでは心細くなってきます。多少、金額が上がろうとも、企画力や提案内容、普段のレス速度、機転など営業マンなら自社で売り込みがかけられないなら、自分を売り込むしかありません(会社の売り込みだと差異化できないからね)。安かろう、悪かろうは通じないです、はい。

◯※3ここ重要。あとで出てきます

はい、戦略策定ですね。ターゲットが見えていません。印刷物ですから、おおよその案件はそのクライアントの「戦略」に則って制作され、展開されているわけですが、そこを理解せず言われたものを作っているだけ、言われたことを伝えているだけではバブル期の1と何ら変わりません。WEBも印刷物も一緒です。媒体が違うだけであって、戦略のツールなんです。必要に応じて使えばいいんです。印刷物でもちゃんとそのあたり考えて作ってますか?しっかりとお客さんが儲かる方法を考えて、媒体選定して、戦略立てれば印刷物でも集客出来ますし(昔ほどパワーはないでしょうが)WEBよりも利益を上げられることもあります。
で、これが出来ないと、WEB案件受注したところで、全くおなじで、結局儲からないよ?って話なんです。

そう、今回の講習の難しさは、
「WEBなら儲かる」とかじゃなくて、今の考え方や動き方だから儲からないんであって、その動き方をしている以上は何やっても同じだよ
ということを言わずして理解させなきゃいけない点。まぁ、無理だろうなー・・・とは思いましたけどw

と、まぁ、ここまで読んでいただいた方の中には、「いやいや、そんなこともないでしょ」と思うかもしれませんが、この記事を印刷会社の内勤スタッフが読んだ瞬間、「まさしく、そのとおりです!」とめっちゃ話が盛り上がることでしょう。もちろん、こうじゃない印刷会社さんもありますし、知ってますよ。でも、大体、地場の中堅どころの印刷会社さんはこんな感じです。

講習内容に関しては次の投稿で→

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