これをこの「記録しておきたい記憶」シリーズにいれていいかは微妙なところですが、感慨深いものがあったので。オチは弱いけど。
今を遡ること約20年前(1995年~1996年)。このブログでも書いてますけど、当時の僕は苦学生でした。
自分で言うのもおかしいですけどね。当時の僕がどんな状態だったか、というと
・銀行から学資ローンを借りて専門学校に通っていた。
・利息は家賃として家に入れていた。
・家で食べる食事以外、日々の食事代や交通費も携帯代も全て自分で払う
・とにかくアルバイトしないと生きていけない
という状態でした。
とにかく頭のなかは「金がない」しかない学生時代
周りの同級生は親が払う、卒業後に親に返す、などそういった人々で、学生生活を満喫していたように感じました。たまに、社会人経験してから勉強したくてって方は自身で払われている方もいましたが(大学出てから専門学校通って、それも全て親が払うという僕からすれば異次元な経済状況の方もいた)、そんななかでとにかく金が要るんだよ、という生活と精神状態でした。そうなるともう視野が狭かったんでしょうね、世の中は不公平だ、とひたすら拗ねていました。
お金がないのでバイトに明け暮れて、誘われても遊びに行くのはあまりできず、(すいません見栄はりました。そんなに友達いなかったんで断るほど誘われていません)とにかく金がない、金がないという学生生活で周りにも自分がいかに金がないかを自慢じゃないけど、吹聴している、そんな輩でした。(このあたりはフランス旅行でも散々出てるけど)
当然、できるだけ支出を控えようとしますので、金がなくなれば禁煙、酒は元々飲めないからいいとして、昼飯なんかも削ってました。
学生時代の昼飯は学校の最上階にある売店のオバちゃんが握ってくれる100円のおにぎり。これを2つと100円のジュース1本。この300円でなんとかしのぎます。
これがお金あるときのメニューで金ないときは、食べずに我慢してた。
で、夜はバイト先で食べるか(野球場は一応弁当出た)、飴玉を舐めてしのぐ(喫茶店バイト時代)。そんな学生でした。
※アルバイトも掛け持ちです。
唯一、食事の心配がない火曜日
1年生のときはそんな感じでした。2年生になると、週に1回だけ昼飯を腹いっぱい食える日が発生しました。
それは火曜日。毎週火曜日に教えに来る先生が午前中の授業でして、授業が終わるとちょうどお昼なんですよ。その先生もその専門学校の卒業生さんで、自らデザイン事務所を立ち上げた社長さんでもありました。
先生は仲の良い生徒を連れて昼飯連れていってくれるんですよ。行き先は学校近くの喫茶店。毎週火曜日はそこで、ランチをごちそうになるのが習慣になっていました。また、これが美味いんですよ、量もそこそこあるし。今の自分の収入や状況ではとてもじゃないけど、頼めないランチでした。贅沢にも食後のコーヒーなんかも頼んじゃって。みんなでタバコ吸いながらデザインとか社会に出てからの話なんかをしてたのを覚えています。その時間は本当に楽しくて。毎週火曜日はご飯も食べられるし楽しいし、なんていう1日でした。
時は経ち20年後
つい先日、とあるお客さんの会社のWEBサイトのリニューアルの依頼があり、その企業さんに向かっていました。別件の仕事もあったので、遅れていったのですが、場所は通っていた学校の近くでした。
卒業してから20年間。学校の近くを通ったり、前を車で走ったり、なんなら学校自体に顔は出したことはあるものの、その喫茶店に行ったことはありません。
お客さんの会社の近くまで着いて、先に打ち合わせや撮影をしていたスタッフに電話をしてみると、ちょうどお昼のタイミングだったことや、お客さんも昼休憩入ってるとのことだったので、「これはいいタイミングだな」と思い、その喫茶店でランチを食べることにしました。
駐車場に車を止めて、店に向かって歩きます。
その場所に「なにかのお店」があるのは知ってるけど、「20年前と同じ店」かどうかはわからず、少しドキドキしましたが、店の前に立つと当時のままで、非常に懐かしく、胸が高鳴りました。そして、扉を開けて店内に入ると、そこに広がったのは20年前と変わらない風景でした。椅子やテーブル、雑誌の置いてある場所もそのまま。変わらない「すこしいびつなレイアウト」の店内。なにもかもが20年前と同じで思わず店内見渡して、入口で立ち止まってしまいました。「そういや、よくわからない場所に置いてあるレジがあったよなぁ・・・」なんて。
20年後のランチ
いつも僕らが陣取っていたテーブルには先客がいたため、そのテーブルの横の席に僕は座り、ランチを頼みました。
ランチはA定食・B定食・C定食の3種類。これも20年前と変わっていません。メニュー自体は詳しくは覚えてませんが、僕は大体、生姜焼き定食かパスタを頼んでいたので、C定食のパスタを注文しました。
そして、20年前に僕らがいつも陣取っていたテーブルを見て、当時を思い出してました。先生が学生だったころの話や実は給料では生活出来なくて、パチンコでなんとか食っていた、業界大変だぞ、とか・・・。今思うと未来ある学生に対して、なんて希望のないマイナスな話をしてるんだとも思いましたけど、社会を知らない学生の僕からしたら面白い興味深い話だったよなぁって。
そんなことを考えていたらパスタがテーブルの上に置かれ、お客さんも次から次へと入ってきました。
わりかし人気店なんだな、と思いつつパスタを勢いよく貪りました。
「当時の味でした・・・」と言いたいところですけど、当時の味を覚えてるほど味覚に自信はないです。でも美味しかったですよ。食べ終わって、コーヒーも飲んで、思い出にも耽りました。
そして、レジに向かい支払いをしようとしたのですが、この店レジが入り口にないんですよね。いざ支払おうとすると、レジの場所がわからない。キョロキョロしてたら店員さんにうながされ、レジの場所を教えられました。そういや、1年間店に通ってたくせに毎回先生に奢ってもらっていたんで、レジ行ったことなかったんだよなぁw
レジで支払いをする際に20年ぶりなんですよって言おうかと思ったんですけど、当時からいた店員さんかわからないし(というか多分違うし)、そんな話をされても迷惑かと思いつつ、ランチの値段を確認しました。
ランチ、コーヒーついて820円。安い。激安とは言わないけど、安い。
20年前、その当時の僕にとって820円は3日分に近い食費です。そりゃ高価なランチだよなぁ、と。
「20年前は『高価』と感じて奢ってもらうしかなかったランチを自分で食べられるようになったんだなぁ」、と。妙に感慨深く感じた出来事でした。
