前回に引き続きディレクターについてです。

前回のでディレクターとは、っていうのを自分なりに書いたので、こっからは「仕事の流れ」になります。そして当然のことながら一回では説明できないので、これも幾つかにわけます。

今回は仕事の流れのなかでの、WEBサイト新規構築編です。

WEBサイト新規作成

ヒアリングシートに基づいたヒアリング

聞いてくるディレクターや営業によって内容や情報量が変わるのはあまり良くないし、現場が困ります。出来ればヒアリングシートを作ってそこに書き込むか、事前にお客さんに送っておいて、回答を用意していただき、打ち合わせで詳細を詰めるぐらいがいいでしょう。

以下のヒアリングは数年前に購入した本に記載されていたヒアリングシートの内容になりますが、さすがにそれを公開は出来ないので、簡単に記載しておきます。

基本ヒアリング

  • 社名や店名の正式名称とご担当者様名
  • ロゴやシンボルの由来など
  • ブランドイメージ
  • 経営理念
  • 社外から持たれているイメージ
  • 社員が感じる自社のイメージ
  • 主軸の商品やサービス、強みは?
  • 競合に対しての弱みは?
  • 代理店や営業部からの要望は?
  • どのような情報を発信したいか?
  • 現状のマーケティング方法は?
  • 宣伝広告の手法と反響は?
  • 顧客情報の取得方法と管理方法
  • 顧客の区別について
  • 具体的な区別について
  • 新規顧客獲得方法は?
  • 既存顧客へのサービスは?
  • 既存顧客に向けてどのような情報を提供したいか?
  • 成約しなかったユーザーヘのフォローについて/li>
  • リアルの商品・サービス導入後の顧客サポートは?
  • リアルでのクレーム対応は?

これをちゃんと聞いてこれるとそれがそのまま会社概要のページの原稿やコンテンツになります。そして、デザイナーはここからデザインや構成のイメージが出来ます。

新規制作に至る経緯
  • Webサイト作成の目的/目標は?
  • 目的達成のための、Web制作以外での動きは?
  • あらたに他媒体との連携は考えられていますか?
  • ターゲットはどんなユーザーを想定?
  • 検索にかけたいキーワードは?
  • 参考としたいWEBサイトは?
  • 好ましい/好ましくないと思われるサイト
  • サイト上の行動でユーザーに何を期待しますか?

「経緯なんている?」と思われる方もみえるかしれませんが、僕は必ず経緯を聞きますし、経緯を伝えます。情報が足りない時には経緯があることで予測が立てられたり、背景を読むことで事前に準備が出来ます。クライアントも全てを話しているわけではないことが多く、そういった情報を経緯から読み取れることが多々あります。

Webサイトの内容について
  • どのような機能を提供したい?
  • どのようなサービスを提供したい?
  • どのような情報を提供したい?
  • 同業が実施しているサービスで、自社にも取り込みたいものは?
  • サイト全体を通してのデザイン性は?
      ・可愛い・キュート
      ・カジュアル
      ・カラフル
      ・ゴージャス
      ・ポップ
      ・派手
      ・にぎやか
      ・モダン
      ・ナチュラル
      ・シック
      ・クール
      ・エレガント
      ・フォーマル
      ・優しい
      ・パステル
      ・シンプル
      ・幻想・神秘的
      ・高級感
      ・知性的
      ・清潔な
      ・重厚な
      ・メカニカル
      ・和風
      ・ヨーロピアン
  • サイトの基本カラーは?
      ・ブルー(濃・淡)
      ・赤(濃・淡)
      ・グリーン(濃・淡)
      ・オレンジ
      ・黒
      ・グレー
      ・ピンク(濃・淡)
      ・黄(濃・淡)
      ・白
      ・その他
  • サイト公開後の更新・運用・アクセス解析(分析)は?
  • 既存の素材(画像、テキストなど)は?
  • 流用できる媒体はありますか?(印刷物など)
  • 指定のサーバー会社は?
  • ご希望のドメインはございますか?
  • ご予算は?
  • 具体的な納期は?

サイトの機能やデザインの系統ですね。ヒアリングシートのなかでもメインの部分かと思います。デザイン性は似たようなものもありますし、これって人によって感覚が違うので、難しいところではありますね。デザイナーの腕の見せどころでもあります。

そして意外と多いのが「サイト構築後の運用」を考えていないことが多い。ビックリなのが制作側にもそういうスタッフがいること。いや、制作だから多いのかな、普段作って納品して終わりだから・・・それじゃいいものは作れない。納品したあとのことも考えて作らないとダメです。

ヒアリング結果に基づいたサイトマップ作成

  • マインドマップを作って作成
  • 基本的なコンテンツを洗い出す。
  • 会社サイトであれば。。。
      ・トップページ
      ・会社概要
      ・アクセス
      ・事業概要
      ・お問い合わせ
      ・サイトマップ
      ・プライバシーポリシー
  • ECであれば。。。
      ・トップページ
      ・会社概要
      ・特定商取引
      ・お問い合わせ
      ・商品ページ
      ・商品一覧
      ・会員ログイン
      ・会員ページ
  • 採用サイトであれば。。。
      ・会社概要
      ・アクセス
      ・事業概要
      ・お問い合わせ
      ・サイトマップ
      ・プライバシーポリシー
      ・募集要項 新卒/中途
      ・採用スケジュール
      ・エントリーフォーム
      ・仕事紹介/職場紹介

ヒアリング結果に基づいたワイヤーデザイン作成

  • 自社内のデザイナーへの指示のために作成
  • テンプレートの捜索
  • ひとりで決めない、仲間に必ず聞く

サンプルデザイン作成

  • トップページだけでなく、下層ページも作成すること
  • ただし、すべてのページでなくていい。トップとメインコンテンツのデザインを提出すること。
  • 出来れば紙ではなく、画面でみせること。

見積書作成

  • この時点での見積もりはまだ概算的要素が含まれる。

サイトデザイン/見積書/サイトマップ提出

  • 提案書としてまとめて提出し、なぜそのデザインにしたのか、なぜこのテンプレートにしたのか、このサイトでユーザーにどのようなアクションを起こさせるように情報設計をしたのか、など、相手が納得するような説明をしっかりとおこなう。
  • その場ですぐに返答が出る確率はかなり低い。

仕様確認、作業範囲確認、要件定義

  • おそらく、この前に打ち合わせが入ると思う。
  • こちらが提出した提案書に対してクライアントからの要望や疑問・質問が入ってくる。
  • めんどくさいかもしれないが、事細かに今までの議事録や打ち合わせのなかで出た要望、表現などを用いて、仕様の確認や作業の範囲を記載した一覧表、予定スケジュールを書面で用意して社判でもいいし、責任者の印鑑をもらう。
  • 後々にこれが自分たちの身を守るし、お互いにキッチリと決め事をして進めるほうがクライアントにとってもメリットのため、契約書を交わす。
  • 契約書を交わすのが当然という姿勢で臨む。
  • むしろ、商取引において、契約を交わさないほうがおかしいという認識でいること。
  • 作業範囲の確認は両者の思い込みをなくす上で必須。どちらの作業範囲かはそれぞれの思い込みで変わってしまうため必ず、マインドマップに記載して漏れがないかを確認すること。わからない場合は仲間と作成すること。
  • 仕様の確認も対応ブラウザの種類やCMSのバージョン、レスポンシブ対応の可否、スマホ対応など細かく聞くこと。クライアントはわからないので必ずわかるように説明し、納得するように説明すること。
  • スケジュールは多少の余裕を見て組むこと。例え、長い、遅いなどと言われても必ず余裕を見て組むこと。前倒しが出来ればそれはそれで評価につながるし、その時にいい顔するために短いスケジュールを組んでいては守れなかった場合にクライアントからの信用は最悪なものになる。
  • また納期が短いものは仲間からも不満が漏れるだろう。ただし、常識の範囲で組むこと。
  • 契約書の内容は特に書式を定められていない場合や、クライアントからの提供でないなら、自社に有利な条件で作成すること。
  • 裁判所の場所は自社の地元の裁判所を使用するよう記載
  • 処理にこまるものは「両社にて協議し、決定する」と記載しておくといい。
  • 2部作成し、両社にて保管する。

制作スタート(見積もり再提出もあり得る)

  • 再見積もりの可能性は大いにある。
  • 単価は基本的に各企業それぞれだが、制作業界やシステム業界でよく使われるのが「式」や「人月」といった単位。
  • 人月は1人が1ヶ月出来る作業量
  • 作業料一式と記載すれば簡単に終わるが必ず明細項目は記載すること。
  • 作業範囲一覧を使えばさほどめんどくさくないし、クライアントに再確認させる意味でも記載したほうがいい。
  • ただ、一式記載すると安くなることが多い。
  • できれば作業ごとに明細の金額を算出して、合計で総額をはじき出したほうがいい。
  • また日本の技術者は総じて自分の単価を安く見積もることが多いので、少し高めで考える。
  • 人日でもいい。早い話しが日当。
  • 時給換算するとわかりやすい。制作業界でよく言われるのが時給1500円。
  • これが自分の賃金として、この金額を単純に3倍する必要がある。賃金+福利厚生費+会社の利益といった具合。
  • ただ、これはあくまで目安であり、この単価そのままでいくとかなり安い。
  • あくまで人件費のみであり、これに本来であれば技術料を入れる必要がある。
  • ディレクターの費用は一概に算出しづらいがプロジェクトの期間に置いて、自分がどれくらい関わるかにも依る。
  • 長期プロジェクトであれば当然、費用は上がる。個人的に一般的な企業サイトで1ヶ月のプロジェクトであれば10~20万程度はディレクション費として計上している。
  • 更に、コンティンジェンシー(予備)費用というものを含む必要がある。通常合計額の10%~20%程度。コンティンジェンシーという項目で記載するのではなく、他の項目に上乗せをするカタチで記載すること。
  • なぜ、このような予備費用を乗せる必要があるか、というとプロジェクトの途中で必ずといってもいいくらいに予定外の仕様の変更や工数の変動が起きる。追加機能であったり、追加のページであったり、追加の撮影であったり。その際にきっちりの金額しかもらってない場合、社内だけでのスタッフであれば問題ないが、外注に振っていた場合、外注先には追加で依頼ができなくなってしまい、利益が減ってしまうから。スケジュールで余裕を見たのと同じで費用にも余裕を見ること。
  • 営業マンがいる企業の場合は営業費という項目でさらに上乗せすることがある。制作チームに営業が入ってないからだ。これも各企業それぞれだが、総額の20%であることが通常。
  • ただ予算が厳しい場合、これでは失注になる可能性がある。失注は最も避けたい状態のため、コンティンジェンシーや営業費を削ったりして調整したり、作業範囲や機能を減らして、金額を予算内に収めよう。

裏ワザ的な方法として

  • 見積書には有効期限を設けておく。
    その見積書の有効期限はサイト納品の少し先の日程を記載しておく。
    契約書に見積もり有効期限や、クライアント側の理由により、進捗が悪い、停止してしまっている場合は再見積もりとさせていただく旨を記載する。
  • ちゃんと読むクライアントはプロジェクトを途中で放棄しない。
  • 制作途中でプロジェクトが止まってしまった。でもできてないから納品も出来ない。お金が貰えない、という行き詰まった場合に最終手段として見積もりの有効期限や契約書に記載してある再見積もりの話しを切り出す。
  • すると、契約書にサインをしてあるので、追加予算なり、カタチだけでもいいから納品をするよう考えてくれるし動いてくれるようになる。実際に、1年ぐらい止まっていたWEBサイト作成がこれで再稼働して納品できた。

もちろん、あまりいい方法ではないが、いい加減なクライアントさんですと、プロジェクトが間延びするのはよくあることで、そういったことを防ぐためにも、契約書や見積書は制作サイドの武器であり、盾である。それに、元々収益や次の展開を考えての制作依頼であるため、クライアントさんからしても悪いことではないんです。

制作

原稿作成・素材の準備(クライアント)

ディレクターで最も重要かもしれない部分。
デザイナーやコーダー、プログラマーなどに仕事を依頼するにも原稿や仕様書が重要であり、それらをどれだけ準備して、わかりやすく説明し、どれだけ仕事を進めやすい環境を作れるか。ディレクターの段取りやクライアントとのやり取りにかかっている。先手を打って必要なものをクライアントに申請しておくこと。

丸投げして、あとはよろしくなんてやり方をしているディレクターもいるが、そんなやり方はメンバーに無駄な負担をかけてしまうし、士気を殺いでしまう。クライアントからも印象が悪い。そのうち仕事をしてくれなくなる。「みんなにやってもらっている」という気持ちを忘れずに。ちょっとした差し入れや言葉をかけるだけでも随分と違う。

取材や撮影、原稿作成・素材の準備

撮影がある=サイトに使う素材を作っている、ということであり、撮影の立会には必ず同行し、自分がイメージするカットを必ずカメラマンに指示すること。撮影するということは、クライアントが使いたい写真をイメージをその撮影時間のなかで作らなければいけないわけで、それが出来なければ、後々、デザイン構築の際に苦労することになる。

撮影する前に参考となるサイトを見せたり、事前にカメラマンと打ち合わせしておくこと。また、抑えの写真としてカメラマンが撮影しているタイミングで自分でも似たようなショットを抑えておくとちょっとしたところで素材として使えたりするのでディレクターもデジカメを持っていくといい。

インタビューや撮影はメインコンテンツに使う場合が多く、これがないと始まらない部分もある。また校正にも時間がかかるため、プロジェクトの初期で済ましておくべき。
クライアントに素材の提供を求めるほか、自分でも無料素材なんかをある程度ピックアップしておくこと。

全ページのデザイン

企業やWEBデザイナーの腕前によってやり方は多少は変わる。
すべてデザインを組んだうえで、確認しながら進める場合もあれば、いきなりコーディングしながら進める場合もある。当然、早いのは後者だが、デザインのやり直しが来たさいにすぐに修正できない部分もある。が、動きなどを見せたい場合はやはり画面で確認してもらうのが一番。
ファーストビューやスマホ対応を求められている場合はスマホで必ずチェックすること。

コーディング

文字の送り、行間、リンク切れなども必ずチェックすること。
この際に内部SEOの設定も行い、タイトル・キーワード・ディスクリプション・本文中に使われている単語の整合性を図る。クライアントからの許可があれば、多少、本文をいじって整合性を高める。

提出

画面で見せるほうがいい。

校正

大概、クライアントの校正は紙に出力してくる。
そのほうが校正はやりやすい。紙の視認性を100とした場合、画面の視認性は60くらいと言われている。

校正対応

お客さんの校正用紙は出力して持っておくこと。
プロジェクト終了するまでは捨ててはいけない。

再提出

多くの制作会社はここで頭を悩ませることが多い。校正回数が決まってないからだ。決めて臨んでいる会社もあるかもしれないがなかなかその要望は通らない。代理店さん経由の仕事であれば尚更だ。提出→校正→再提出の無限ループに依って金額は変わらないのに工数は増えていく。

しかしクライアントからすればいつまで経っても要望通りなものが出てこないから何度も校正している場合もあるので、どっちが正しいとも言い切れない。

ただし、ディレクターや営業はイエスマンになるのではなく必ず交渉をすること。何故、そのデザインにしたのか、その機能にしたのか。そこが説明責任であり、自分がこれで提出すると決めたからにはそこは押してくるべき。ミスやバグは対応すべきだが、そうでない場合はお客さんが納得いくように説明してこなければいけない。これが出来ないと現場からの信頼を失う。

検収

検収は必ず印鑑ももらうこと。
費用と作業内容を記載して、備考欄に注意事項や納品後の対応などを記載

納品

納品=保守のスタート。
契約内容にも依るが、ただ放置ではダメ。クライアントの教育をしながら、アクセス状況を確認しながら改善点や企画、コンテンツの提案をおこなう。クライアントからすれば、頼りになるのはアナタしかいない。制作会社はたくさんいるし、制作の営業は虎視眈々とリニューアル提案を伺っている。クライアントのWEB担当者の育成もおこなったほうがいい。

表立っての教育や育成という意味でなく(講習とかをおこなってできるのであればそれに越したことはない)、クライアント側の担当者にも学んでいただき、二人三脚で動いていかないとなかなかいい結果を出し続けるのは難しい。こちらはWEBのPROであり、「こうしたらいいのに」「こうするともっとよくなる」とわかっていて提案しても、向こうには向こうの業界ルールや社内ルール、事情、都合があるため、やりたくても出来ない、ということがある。

我々は社外の人間であるため、そういった「社内事情」はわからないのである。また、担当者もPROではないので、その提案に対して良し悪しがわからない。ではその提案に対しての判断基準がどうなるのか、というとその提案に対しての「見積もり金額」が判断基準となる。

なぜ、金額が判断基準になるのか、というと「金額」が共通の文化/認識だからだ。わかる部分が「金」しかない。「これをやるのに、これだけのお金がかかる」、それに対しての費用対効果を見るだけである。経営陣は基本的に数字しか見ないので、その提案に対して得られる結果が詳細かつ確実な成果であれば、「投資」として許可をするが、「やってみなきゃわからない」というものであれば、それを「経費」として捉え、拒否することが多々ある。これはクライアントにとっても不幸である。

その費用がクライアントにとって、どれほどの価値のものなのかも考える。

  • 制作費用はクライアントの粗利から支払われているわけであり、クライアントがその費用を支払うために、どれだけの売上を計上しなければいけないかを考えることで、制作費用の重みは見えてくると思う。
  • 例えば利益率2割の企業であれば、30万の制作費用を支払った場合、売上として150万の売上を計上した際の粗利を支払っていることになる。
  • そうなるとその制作物には150万以上の費用対効果を求められることになる、という認識が必要。
  • だからといって必要以上に減額したり、過剰なサービスをする必要はないが、こういったことが念頭にあるかないかで動き方や対応は変わってくるはず。

WEB担当者の育成やクライアントのWEBへの造詣を深める行為は自社の売上に繋がる行為だけでなく、クライアントのWEBマーケティングの幅を広げ、より多くの機会を生むことにも繋がるのである。そうすることで、クライアントはその施策により今まで以上の結果を得られ、制作は仕事とその対価が発生する正のスパイラルが発生するのである。

納品後

アクセス解析をもとに改善提案や企画の提案

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