マーケティングオートメーション導入の背景

以前、とあるクライアント企業に対して、マーケティングオートメーション(以下、MA)の導入を提案したときのこと。

 

マーケティングオートメーションとは・・・ 個人を特定して実践するマーケティングソフトウェアである。このソフトウェアの運用を行うには、把握する個々人に対する施策や属性管理を行なえる要素や方法論が企業内で必要であり、顧客個人を特定する必要がないか、または営業員によるフォローアップによって成約確率を上げる必要がない低単価消費財のマーケティングには適さない。 大量生産・大量消費を前提としたマスマーケティングの時代から、消費者個別のニーズに合わせたOne to Oneマーケティングの時代へという市場環境の変化により注目を集めたものに顧客関係管理(CRM)がある。この概念をデジタル・コミュニケーション分野を中心に絞り込んだ概念がマーケティングオートメーションである。マーケティングオートメーションの利用が拡大している背景には、インターネット上の情報量の拡大に伴いコンテンツの質の向上が認知され始めたこと、デジタルデバイスの普及により従来は電話やファクスが主であった業務用コミュニケーションの手段がPCメールを経てスマホによるメールへとコミュニケーションの手段が変遷したことへの相関性が高い。マーケティングを効率的に実践しようという観点では、従来のwebマーケティングもマーケティングオートメーションも共通している。しかし従来のwebマーケティングの概念が「より早くコンバージョンに持っていくこと」を主眼に効率化を図るのに対して、マーケティングオートメーションは、時間をかけた効率的な相互の「コミュニケーション(説得)を実現」して最終成約率を向上させようとする点が相違点である。-参照:マーケティングオートメーション

 

CRM(顧客管理システム)はすでに運用されており、顧客情報の蓄積と管理は一定の水準に達しています。
しかし今後の市場環境や顧客行動を考えると、個々の顧客とより長期的かつ双方向の関係を築く必要があり、
そのステップとしてMAの導入を検討しています。

とはいえ、導入にはいくつかの障壁があります。
データ整備・社内運用体制・顧客情報の活用方針など、解決すべき課題は多く、短期間での実装は難しい状況です。
そのため、本格導入前に「まずできる範囲で仕掛けてみる」という方針を取りました。

 

MAの考え方を“手動”で実践してみる

今回着目したのは、フォーム送信後に表示・送信される「サンクスページ」と「サンクスメール」です。
通常、これらは「お問い合わせありがとうございました」程度の定型文で終わるケースが多く、
重要な接点であるにも関わらず軽視されがちな領域です。

しかしMAの概念を踏まえると、これらはユーザーが最も関心を持っている瞬間=「最も熱量の高い接点」です。
このタイミングで次のアクションを自然に案内できれば、効果的なナーチャリング(育成)につながるのではないかと考えました。
言うなれば、“手動マーケティングオートメーション”です。

 

具体的な仕掛け

複数のサービスや商品を展開している企業の場合、
ユーザー視点ではそれぞれが独立して見えますが、企業側には「導入してもらいたい順序」が存在します。
たとえば、A → B → Cと段階的に利用してもらうことで効果が最大化されるようなケースです。

そこで、Aを申し込んだユーザーのサンクスページやサンクスメールにBの案内を掲載し、
Bを申し込んだユーザーにはCを案内する、という形で段階的な導線を設計しました。
この設定はフォームやメールのテンプレートを一部編集すれば対応可能で、大掛かりなシステム改修は不要です。

参照:見落としていませんか?サンクスページの見直しでコンバージョンをアップする方法

 

施策の狙いと期待される効果

サンクスページやサンクスメールは、ユーザーがすでに企業やサービスに好意を持ち、
自ら行動(申し込み・購入)を起こした後に必ず触れるコンテンツです。
つまり、最も関心度の高い状態にあるユーザーに次の提案を届けることができる、
いわば“最も確度の高い再接触ポイント”なのです。

このタイミングで関連サービスや次のステップを案内することで、
ユーザーにとっては自然な流れで情報を受け取れるうえ、企業側にとっても追加利用や継続率の向上が期待できます。

まだ実施直後のため、効果測定はこれからですが、
仮に少数でも成果につながれば、それは次の改善ステップへの重要な示唆となるでしょう。

 

まとめ:小さな仕掛けが大きな成果を生む

MAの導入はシステム面・運用面ともにハードルが高く、時間を要する取り組みです。
しかし、考え方そのもの──「ユーザー一人ひとりに合わせて最適なタイミングで提案する」という思想──は、
ツールがなくても実践できます。

今回のように、サンクスページやサンクスメールを活用した“手動MA”は、
システム導入前のトライアルとしても、また社内の意識改革としても有効です。

重要なのは、テクノロジーではなく「ユーザー視点の継続的コミュニケーション」をどう実現するか。
小さな改善の積み重ねこそが、最終的に大きな成果を生む第一歩になるはずです。

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