というタイトルですが、もちろん広告代理店の営業担当者すべてに当てはまる話ではありません。あくまでごく一部の方々に見られる傾向についてのお話です。

どういった方々かというと、いまだに
「WEBやITのことって、ちょっと苦手で…」とか
「弊社ではその分野はあまり強くなくて…」
といった言葉を、つい口にされる営業の方々です。

大手広告代理店さんや全国展開している企業ではなく、地方都市を拠点としつつ東京にも支店を構えるような中堅規模の広告代理店で、ある程度の歴史を持つ会社の営業さんに、そうした傾向を感じることが多いように思います(あくまで私の身の回りの印象ですが)。

個人的な推察ですが、そうした方々の特徴としては以下のような点が挙げられるでしょう。
 ・4マス媒体広告を得意とし、それを主軸に成長してきた
 ・チラシや紙媒体の企画・デザインには強いが、WEBに関しては外注任せ
 ・営業担当は40代以降(30代後半も多い)
 ・「接待営業」がいまだ重要な業務の一部

 

とあるコンペで感じたこと

ある企業の大型キャンペーン案件のコンペに参加したときのことです。
この企業は毎回複数の広告代理店を招いてプレゼンを行っており、仮にA社とB社としてお話ししましょう。

A社はその企業と長年の付き合いがあり、普段の広告も多く請け負っている会社。
B社は比較的新しい関係ですが、誠実でしっかりと仕事を進める印象の代理店です。

両社を比較すると、以下のような特徴がありました。

A社

規模:地方都市では知名度の高い中堅代理店
状況:長年にわたり大型キャンペーンを担当
営業:40代男性。クライアントには常に低姿勢
   接待が得意で、実務は外注任せ
メリット:クライアントにとって使い勝手がよく、安心感がある
     社内には優秀な企画スタッフも多い
デメリット:関係が馴れ合い化しており、ミスが目立つ
      クライアント社内では評判が芳しくない

B社

規模:全国展開しているが知名度は控えめ
状況:小規模イベントを主に担当
営業:50代男性。柔らかい物腰ながら言うべきことは言う
   接待なし。ディレクション能力あり
メリット:仕事が丁寧で安心感がある
     WEB広告について勉強しており、知識を持っている
デメリット:大型案件の経験が少なく、不安視される部分も
      本社ではなく支店所属のため、リソースが限られる

 

「あれ?B社のほうが良さそうなのに…」

コンペ当日。私はクライアントからの依頼で審査側として参加しました(WEB分野の判断ができる人材として)。
A社・B社ともにプレゼンを終え、各セクションごとに点数をつけて集計。
結果を見ると、ほとんどの項目でB社のほうが高得点。
ところが、WEB施策に関しては内容がほぼ同じにもかかわらず、A社の得点が上。最終的にA社が採用される流れとなりました。

私はその結果に疑問を感じ、会議の進行を止めて再確認をお願いしました。
理由を尋ねると「A社の方が費用対効果が高い」との説明。
しかし、実際に算出すると顧客獲得単価ではB社のほうが優れており、他の項目もB社が上。
結局のところ、「使い慣れている」「関係が長い」という慣例的な判断が大きかったようです。

私はWEB部門の責任者として、その点に異議を唱え、A社・B社に「同条件下で再提案」をお願いすることにしました。

 

条件をそろえると結果が一変

後日、両社から改めてシミュレーションが提出されました。
結果、B社のほうが集客見込み・顧客獲得単価の両面で優秀な数値を示しました。
担当者はさらに精度を確認するため、A社・B社双方に根拠を質問。
ここで、明暗が分かれました。

B社の営業担当は質問に対して即座に数値根拠を説明し、自信をもって回答。
一方、A社の営業担当は「確認します」「聞いておきます」といった曖昧な返答ばかり。
最終的に「対応が遅く、信用できない」と判断され、案件の一部がB社に移る結果となりました。

A社の営業担当は、実際には外部業者に丸投げしており、メールも打ち合わせも常に中継役。
それ自体が悪いとは言いませんが、自身の理解や知識の蓄積がないため、リアルタイムの質疑応答に対応できなかったのです。

 

接待よりも、信頼を得る知識を

接待が得意でも、会議に参加している全員を相手にすることはできません。
最終的には「数字の根拠」と「信頼できる説明力」が物を言う時代です。

印刷会社の淘汰、ネット印刷の普及、新聞広告の衰退、テレビ視聴率の低下。
メディア環境は激変し、WEBを抜きにした広告・広報活動はもはや成立しません。
その中で「WEBは苦手で」と言い続けるのは、もはや通用しないのではないでしょうか。

 

広告代理店の営業担当こそ、WEBリテラシーを

もし、WEBに関わらずとも業績が安定しているなら問題はないかもしれません。
しかし現実には、クライアント側が積極的にWEBやデジタル広告を学び、知識を得ています。
その中で「広告・広報のプロ」として接する営業担当が、クライアントより知識が浅いとなれば、信頼を損なうのは当然です。

クライアントの要望を受けた際に、それが効果的か否かを判断し、場合によっては代替案を提示する。
そのためにも、少なくとも基本的な仕組みや効果の見方くらいは理解しておくべきです。
「運用までできるようになれ」とまでは言いませんが、
説明や判断ができるだけの知識は、これからの広告営業に欠かせないスキルです。

以上、「WEBのことはよくわかりません」と言い続ける時代は、もう過ぎたのではないか――というお話でした。

 

まとめ:営業スタイルの転換が信頼を生む

これまでの広告業界は、対人関係や経験則に基づく営業スタイルで成り立ってきました。
しかし、デジタルが主軸となった今、クライアントが求めているのは「誠実な対応」や「数字に裏付けられた提案」です。

WEBやITの知識は、もはや専門職だけの領域ではなく、営業職にとっての“共通言語”になりつつあります。
つまり、営業担当がその知識を持つことは「自社を守る武器」であり、「クライアントの信頼を得る最短ルート」です。

これからの広告代理店に求められるのは、
「接待ではなく、理解力と提案力で関係を築く営業」
だと感じています。

クライアントに寄り添いながらも、数字と根拠で語れる営業。
そんなスタイルが、これからの時代を勝ち抜く鍵になるのではないでしょうか。

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