少し前のことですが、こんなことがありました。
とある企業さんのサービスで
・限られた方にだけのサービス展開をしているが、一般公開はしない。
・でも、ID/PASSで鍵かけると、覚えてないお客さんには煩わしいから、鍵はかけたくない。
・LPを作るまでもないんだけど、申込みフォームの上部に画像貼るだけでは、伝わらない。
・WEB上でアクセス出来るようにしたい、アドレス知ってる人だけがアクセス出来るようにしたい
と言うご相談をいただきまして、「ならPDFをサーバー上に設置して、(robot.txtで)検索かからないようにしましょう※」と提案しました。
(※絶対に検索にかからない、というわけではないです。)
それはいいアイデアだ、ということで実施が決まったのですが、そのPDFファイルから申し込みフォームに飛ぶようにして、なおかつ、パラメーターをつけて流入経路を判断したい、とのこと。まぁ、PDFにリンクを仕込むことは出来ますので、それで対応すれば出来るでしょ、ということで制作がスタートしました。申込みフォームは僕が作成し、PDFファイルは印刷はしないけど、リーフレット形式になるので、紙系のデザインを担当している広告代理店さんが作成することになりました。
Contents
どこをクリックするんだ?
申込みフォームが出来上がり、PDFも出来上がってきて、デザインチェックをしていたときに違和感を感じました。
「ん?申込みフォームに飛ぶためにはどこをクリックするんだ?」と。探してみるも「ボタン」がない。
デザインに統一性はあるし、悪いデザインではないんだけど、クリックする場所が見つからない。
じーっと見て、読んでいくと、デザインの真ん中あたりにエンジ色の帯があって白文字で「詳細はこちら」と文字が記述されていました。
どこをクリックしていいかわからないから、わかるようにしてほしい、の回答
そこにマウスをかざすとアイコンが反応しました。リンクは問題なく入っており、フォームに遷移はするものの、如何せん、これではボタンとして気づきにくい。
クライアントから広告代理店に「どこをクリックしていいかわからないから、わかるようにしてほしい」という修正要望が飛びました。
WEB側の僕(昔はDTPのデザイナーですが)は、「ボタンっぽいデザインにして、こちらをクリック」とか「小さい文字でURL自体を記載したり、WEB上で『リンク』ってわかるような表現にしろってことだな」と受け取っていたのですが、広告代理店が修正して提出してきたのは、エンジから金色の帯になってより目立つ装飾になった「お申し込みはこちら」と具体的な内容に変わっていました。
一応、そこで校了してしまったのですが、「そうじゃないだろう」と。
目立つようにはなっているが、根本的な解決にはなってないじゃん、と。
紙面上デザインでボタンをデザインしても押さないわな
紙のチラシや冊子などのデザインで「ボタン」などをデザイン上で表現はすることはあるでしょうが、ユーザーも紙面上のボタンを実際に押したり、クリックすることってのはありません。紙系のデザインで高級感のあるデザインで作成というリクエストのなかで、なるほど、「ボタン」や「スイッチ」のデザインは高級感を損なう可能性があり、「ボタン」よりは装飾されたゴージャスな感じの「帯」のほうが合います。それともしかしたら、紙面のデザインに「リンクを埋め込んで実際にボタンとして機能するオブジェクト」を表現するという発想に至らない、またWEB制作をやるにあたって、通常考える「この色にすると、このボタンサイズだと、角丸のほうが、円のほうが、クリック率が高い」といった機能性やクリックのしやすさ、とかは紙面デザインの際には考えないもんなぁ・・・と(紙面は紙面で別のことを考えますけどね。それは後述)。
代理店の営業マンにやりとりを聞いてみた
広告代理店の営業マンにある日聞いてみました。
「先日のPDFですけど、あのリンクの部分は、なんでボタンにしなかったんですか?こちらをクリックとか書いてボタンぽいデザインにしたほうがよくないですか?」って聞いてみると、
「あ・・・思いつきもしませんでした。そもそも紙に「ボタン」を置くという発想がなく・・・」
あ、やっぱり・・・。
「デザイナーさんとはなんて言ってました?またはどんな指示を出されたのですか?」
「いや、お客さんから言われたままに・・・目立つようにしてって・・・」なるほどなるほど・・・。
「そのデザイナーさんって、普段はWEBデザインやLPとか、WEB広告のバナーとかそういったWEB絡みのお仕事ってやってみえますか?」
「いえ、紙系オンリーです」はい、なるほど、たしかに。
「そのデザイナーさんのことはよくわかりませんけど、おそらくね、紙面デザインをされている方って、普段のデザインの制作物のなかで、『ボタンの色』とか、『ボタンの形状はこうしたほうがクリック率があがる』とかはあまり経験ないと思うんですよ。常に紙面デザインに何か申込みボタンをデザインすることはないだろうし。誤解してほしくないのは、紙面デザインが何も考えてない、WEBは考えてるってわけじゃなく、ね。」
「だけど、今回はWEBで使用するんだし、『ボタン』を押してもらうわけです。そのデザイナーさんには、そういったWEB制作物の経験が薄かったのなら具体的にボタンにして、とか説明したほうがよかったのでは?」と。
紙とWEBのデザインはそれぞれ違う
そんな感じで説明すると、「あ、言われてみれば確かに・・・。デザイナーさんでも違うんですね」と。
そう、デザイナーさんでも紙系の方とWEB系の方では気をつけるところが違ったり、得意不得意があったりします。もちろん、両方出来る方もいます。
僕の知人WEBデザイナーさんは、「紙は面積が決まっているのですごくやりづらく、どう構成していいのかわからない」と言いますし、WEB系だけしかやってきていない方の場合は、写真の解像度とかCMYKとか印刷の設定とかわからないといいます。
面積の問題は大きいでしょうね。WEBの場合は下に伸びていくことが出来ますが、印刷物の場合はそうもいきません。あとはCMYKによる写真の色の変化、トンボで裁断した結果のイメージ(余白が削られることで見え方が変わってしまう)、あとは・・・印刷物制作のプレッシャーは凄まじいのですが、やり直しがきかない、でしょうか。WEBはサーバーアップ後でも修正出来ますが、印刷は刷りだしたらもう止まりません。誤植あったら刷り直しです(WEBに慣れると印刷物のデータ作成がめっちゃ怖いです)。
同じデザイナーでも違う
同じデザイナーさんでも得手不得手あり、または出身や経験に依っては発想が違うというか、出来ないとは言わないですが、やらないデザインというか、指示が伝わらないというか、そういったこともあります。今回のことで、そういや、紙系の方だと(具体的に言わないと)押してもらいやすいボタンとかクリックされやすいかどうかとかの発想はないわなぁ・・・と思った次第でして(それに具体的な意図というか使い方の説明というかもしてないっぽいし)。初めからそこを考えるというか意識して具体的にどうするといいのか、などのデザイン指示を出しておけばよかったな、と。広告代理店の営業さんにも「同じデザイナーでも違う」というのがわかったようなので、それはプラスなのかな。
